ステントグラフトは、広範囲のさまざまな末梢動脈に関する疾患、ならびに腹部大動脈瘤(AAA)のような腹部および胸部大動脈の病状を治療するために用いられます。腹部大動脈瘤に用いられる血管内ステントグラフトの成功により、類似技術を下行胸部大動脈瘤(TAA)に適応させることができるようになりました。未治療の動脈瘤、あるいは(複雑な胸部手術をとおして)従来治療した動脈瘤に関する生存率は、通常きわめて低い値です。

ステントグラフトの利点には、手術時間の短縮、大きな胸部切開あるいは胸腹部切開の回避、そして死亡率の大幅な低下があります。手術を成功に導くためには、とくに上部下行胸部大動脈のケースでは、ステントグラフトを正確に取り付けて、確実に動かないようにしなくてはなりません。

大動脈の生理的動態は大変重要なので、一般的にステントグラフトを確実に配置できるかどうかは、正しい選択とサイズの決定に大きく依存します。さらに、ステントグラフトは、冠状動脈用ステントよりもはるかに大きい直径(2、3 mmに対して 30 mm以上)があります。ステントグラフトの半径方向力を評価することは、メーカーが生体内に移植された医療器具の有効性と信頼性を確実にするために役立ちます。

インストロンのRX650には、直径が40 mm以上、長さが200 mm以上のステントグラフトを収容する自由度があります。ステントグラフトの好ましくない変形をひき起こしてしまう圧縮プラテンあるいはVブロックに依存する取付け具とは異なり、このRXシステムは、正確な半径方向力の測定値を提供するため、摩擦の低いセグメント手法を利用しています。この取付け具はカスタマイズを行ったり、特殊試験片用に利用することもできます。またこの取付け具は、グラフト全体にわたる半径方向強度と剛性、または固定グラフト端部における半径方向強度と剛性を提供します。このシステムは、室温試験でも優れた比較結果を提供しますが、体温をシミュレーションするため、チェンバーと組み合わせた構成を用いることもできます。