UCL ElectroPulsで行う低荷重試験

事例 | Bio | London, UK

UCL Logo「ElectroPulsは、完全なインデンテーション試験にわたって、非常に精密な尺度で多くの情報を提供します。」

- UCL医科大学生ロバート・ショー氏

微細構造組織の機械的試験は、特にがん治療においてますます活発な研究領域となりつつあります。この微小組織の変化が癌腫増殖の指標となり、組織の効果と言われます。外部からの機械的な力は、細胞シグナル伝達調節に直接的に影響し、増殖に影響を及ぼす可能性があります。従って、微小環境の機械的特性を調べることは、がん細胞増殖の生体力学的モデルを作る鍵となります。

がん細胞のサンプルは厚さ150μmのコラーゲンスキャフォールドを用います。このような薄いサンプルの機械的試験は困難な課題です。ElectroPuls™ E3000を用い、高データ取得でのマイクロインデンテーション試験により、非常に小さなサンプルの機械的特性を調べることができました。

インデンテーション試験は、全荷重域での反応が捉えられ、体積弾性率値を示し、局所的な試験が行えることから、薄膜組織の機械的特性評価の分野を広げています。

薄膜の試験

インストロンのElectroPuls E3000には、5Nのロードセルが取り付けられていました。150μm厚のコラーゲンゲルでシャーレーに満たしました。最初、0.05μm毎秒の試験速度で圧入する、シンプルな波形を用いました。

圧子をゲルの表面から数μm上に正確に配置することは困難であったため、試験が非常に長期間にわたることが想定されました。ゲルを0.5Nまで圧縮し、次に圧子をゲル面のすぐ上まで150μm上昇させる、より複雑な波形を作成しました。これにより、0.05μmの試験速度を維持しながら、試験時間を四分の一に低減させることができました。

この超低速インデンテーションにより、剛性を推定できる薄いゲルの、荷重-押し込み量の正確なプロフィルを得ることを可能にしました。

この結果をローパスフィルタを用いてノイズ除去処理し、ダウンサンプルフィルタによりファイルサイズを低減しました。線形モデル解析を用いて、試験の開始点、ならびに下層にあるプラスチックが重大な影響を与えるようになる点を求めました。

荷重-押し込み量のプロフィルから、モデル化公式を用いてコラーゲンゲルの弾性係数を求めました。

Formula

ここで、Fは荷重、Eは弾性係数、Rは圧子の半径、δは押し込み深さ、νは材料のポアソン比です。

インストロンのElectroPulsE3000には、5Nのロードセルが取り付けられていました。

これにより、0.05μmの試験速度を維持しながら、試験時間を四分の一に低減させることができました。

インストロンの利点

3KNの動的疲労試験が実施可能なElectroPuls™E3000で薄膜上の組織サンプルの試験を行うことで、試験機の柔軟性と、ユーザーの工夫によって試験機が果たすことのできることの限界を実証することができました。Instron®は、さまざまなアプリケーションに対応できる幅広い容量のロードセルを提供しています。

材料の弾性率は試験速度に依存するので、生体力学的モデル化のための正確な弾性係数を、生理学的速度での試験から得る必要があります。忠実な制御ループによる高い位置決め精度を実現するElectroPuls™は生理速度に近いマイクロメートル/分程度のクリープのような試験を行うことができます。

システムでの誤差を積算しないよう、ユーザーに生データ提供しています。エンドユーザーは、どのような方法であれ、それらが適合するように、データを処理することができます。

UCL Low Force Image

計算モジュールの能力は試験機の能力を増強し大幅に改善されまた、ノイズ低減技術の採用により実証されました。試験機が取得したすべてのデータの平均値を取り、記録するシンプルなノイズ低減アルゴリズムで、計算機能を使用してあらゆる試験に対し、システムがどのようにチューニングするかを示すことができます。

UCL Case Study Figure 1

 

これにより、10kHzのデータからの情報を使用しながら、10Hzで記録する管理しやすいファイサイズを維持し、ノイズレベルを非常に低くできます。こうして、小さな計算を追加するだけで、大幅にノイズレベルを減らすことができたのです。

 

結果

 

2つのグラフは、50Nロードセルが150μm厚の軟組織コラーゲンゲルから機械的情報を、シンプルですが明瞭に提供できることを示すものです。

UCL Case Study Figure 2

最終的な結果は、この形状のコラーゲンの弾性率が1800Pa~2500Paの範囲にあることを示すことができる(図2)。これらの結果は増殖のモデルに組み込むことができるだけでなく、これらのゲルから結果を得ることができることを実証しています。このことは、さらなる研究により、コラーゲン包埋癌細胞の特性を明らかにし、癌増殖のより良いモデルを得ることができることを意味しています。

これらの結果を、通常はるかに小さなサンプルの弾性係数の測定に用いられる原子間力顕微鏡を用いて検証しました。 原子間力顕微鏡からの結果は、ElectroPuls™からのものと同時であり、この種の試験では、ElectroPuls™が薄い生体組織を試験する能力と感度を有することを示唆しています。

 

事例掲載に関するご協力をいただき感謝申し上げます。:

Dr. Md Pilar Garcia  Souto, Medical Physics and Biomedical Engineering Dept, UCL.
Dr. Peter Wijeratne, Centre for Medical Image Computing, Computer Science Dept, UCL.