残留シール力(RSF)の判定

医療用バイアルの機械試験


residual seal force fixture

注射薬やワクチンなどの非経口薬は通常、ガラスバイアルに包装されます。これらのバイアルは、製品の汚染や漏れを防ぐために、ガラスバイアルと弾性ゴム栓間で堅牢なシールによる密封性を維持する必要があります。残留シール力(RSF)は、このシール品質の評価指標です。 

RSFの評価対象となるガラスバイアルは、医療業界でのみ使用されます。RSF試験の重要性を示す好例として、コロナワクチンが挙げられます。一部のワクチンは効果を維持するために極低温で保管しなければなりません。極端に低温になると、弾性ゴム材料が収縮し、バイアルシールから液剤が漏出する可能性があります。RSF試験は、製造業者が原材料や組立工程の評価に役立てるために、考えられる全温度範囲で実施できます。この検証試験は、医薬品が患者に投与されるまでに輸送や保管に耐えることができることを確認するうえで必須となります。 

残留シール力とは?

「残留シール力」とは、弾性ゴム栓をバイアルのアルミニウムキャップに配置したときにかかる力を指します。この力の測定値は、バイアルの密閉の安全性を示します。バイアルのシールは、ゴム栓とアルミニウムキャップから構成され、最初に力をかけてバイアルに圧着されます。時間経過に伴って、この圧着力は、ゴムの弛緩作用、キャップが押し付ける力の減衰、各処理手順などによって低下します。  

残留シール力に関する図
 残留シール力の判定

米国薬局方(USP)は、容器施栓系の完全性(CCI)の判定基準を記載しています。これは、非破壊的な方法によって漏出を防ぐ容器の性能を評価する指標となります。さまざまな研究により、残留シール力の測定値と容器のCCI性能の間に相関関係があることが明らかにされており、多くのバイアル製造業者が品質プログラムへのRSF試験の採用を進めています。残留シール力の結果は、キャップ装着工程や圧着工程にも関連していて、製造業者はキャップ取付け設定を最適化し、CCIの最大化につなげることができます。 

材料試験システム

RSF試験は、500 Nまたは1,000 N 2580シリーズロードセル付き68SC1などの低荷重のインストロンシステムで実施できます。インストロンはまた、バイアル端部の周辺に圧縮荷重がかかるように設計された特殊治具(CP131410)も提供しています。この荷重は、アルミニウムキャップの下端が外れて荷重とは反対の方向に動き始めるまで維持されます。上部の圧縮治具は球形に固定されています。このためキャップ自体の位置がずれている場合であっても、同治具が自己旋回してほぼ完全に位置合わせされた状態に維持されます。残留シール力の自動測定には、密閉工程に伴う荷重の減少程度を測定できるソフトウェアが必要となります。アルミキャップを上部から離脱して荷重と反対方向に動かす力は、グラフ上での平坦部としてソフトウェアに表示されます。残留シール力は、手動カーソル選択または自動計算のいずれかを用いてBluehill Universalソフトウェア上で計算可能です。




RSF試験のセットアップ
1) 6800シリーズ ユニバーサル試験システム
2) Bluehill Universalソフトウェア
3) 2580シリーズロードセル
4) カスタム試験治具CP131410

 

インストロン残留シール力システム 
試験のヒントとコツ
  • 残留シール力試験時にデータのばらつきを抑える制御は、難しい場合があります。バイアルの弾性ゴム栓による密封性は、短期的には弛緩し、長期的には経年劣化します。このため、試験中のデータのばらつきを最小限に抑えるには、必ずサンプル内の全試験片をほぼ同時に確実にキャップすることが重要となります。位置調整もまた、再現性のある結果を得るために重要です。荷重が中心から外れると各試験間での変動性が大幅に高くなる可能性があるため、治具の使用はバイアルと圧縮盤の表面間での同心度の維持に役立ちます。
  • バイアルキャップに圧縮荷重をかけることにより、RSF点を超えた点で曲線に明確な湾曲点が表れ、バイアルの頭部から押し付けられたキャップが分離します。
  • ドラッグデリバリー用機器の機械試験の詳細については、ここをクリックしてください。 
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