自動車などの車両のタイヤの補強材として使用されるコードやワイヤーは、最も要求の厳しいアプリケーションの一つです。ワイヤーは人の髪の毛のように細くありながら、タイヤが実際に使用される際にかかる複雑な荷重に耐えられるようタイヤを補強しなければなりません。ですが、ワイヤーは衝撃や疲労などにより破壊してしまうこともあります。
この種の繊細なワイヤー(の試験での)に関する大きな課題の一つは、その細さと硬さによりグリップすることが難しいということです。適切なグリップ方法を用いないと、フェースのエッジでの応力集中により、チャック切れや早期破壊を引き起こしてしまうでしょう。さらに、試験時の材料のひずみが小さいので、従来の変位トランスデューサでは正確なひずみデータの測定に十分ではないということがわかっています。また、接触式の伸び計を使用すると、ナイフエッジのすべりによるエラーや応力集中などにつながることもあります。
タイヤの補強に使用されるワイヤーの疲労特性や破壊特性を調べるには、インストロンのElectroPuls™や8800油圧サーボ試験システムをご使用いただくことを推奨いたします。特に繊細なワイヤーには、適切な低荷重ロードセルや低重量のグリップを選択いただくことが、動的試験を成功に導くためにより重要になります。
このケースでは、ElectroPuls E1000試験機に、低荷重Dynacell™ロードセルと、応力集中を起こさずにワイヤーをグリップするワイヤー用の極小コレットグリップを取り付けて試験を実施しました。さらに、変位データのモニターには、ElectroPulsシステムに内蔵された光学式デジタルエンコーダを使用しました。この試験は、周波数80Hzまでで0.5N~1.5Nでうまく実施できました。
また、破壊試験用の試験片は、ワイヤーのより太い部分から作成し、放電加工でノッチを入れました。その後、試験片を20Hzを超える周波数で疲労試験し、光学顕微鏡を使って亀裂の成長を測定しました。