ISO 178定義ガイド

ISO 178に準じたプラスチックの曲げ試験の実施

筆者:Daniel Caesar

 ISO 178ヘッダー

プラスチックは、安価で軽量であるとともに、耐食性と汎用性が高いため、さまざまな産業で広く認知されています。プラスチックの材料特性を把握することは、実際の用途で期待される挙動を特徴付けるために重要です。重要な特性の1つに、プラスチックサンプルを曲げたときの応力とひずみの関係、つまり材料の曲げ特性があります。この特性を決定するメソッドを国際的に標準化するために、国際標準化機構(ISO)はISO 178を策定しました。

このガイドは、ISO 178曲げ試験の基本的な要素について、必要な試験装置、ソフトウェア、試験片、および規格に伴う結果の概要などをご紹介します。ISO 178に沿った試験を計画している場合は、このガイドは規格全文に相当しないことをご理解ください。

測定の対象となるもの

ISO 178は、万能試験システムで3点曲げ試験を行い、硬質プラスチックと半硬質プラスチックの曲げ特性を測定するための試験メソッドです。3点曲げ試験は、両端で自由に支持された長方形の試験片の中央に荷重を負荷する試験です。荷重はロードセルで測定され、結果として生じるたわみは、システムのクロスヘッド変位(結果はシステムのコンプライアンスに応じて補正されます)または直接ひずみ測定装置で測定されます。ISO 178には4つの試験タイプがあり、それぞれでたわみ測定方法(クロスヘッドまたは直接ひずみ変換器経由など)と、関連する校正精度要件が規定されています。

試験室が実施するISO 178試験の種類は、研究開発試験室のような社内、または第三者の試験室のような社外を問わず、お客様の要求によって規定されます。試験機の購入や試験の実施に先立ち、お客様の試験室に対する具体的な要求事項を確認し、お客様の同意を得ることが重要です。

ISO 178はお客様にとって最適な規格ですか?

ISO 178はASTM D790と非常によく似ていますが、いくつかの重要な点で異なっています。

  • ISO 178では、弾性係数を測定するために、たわみ計またはコンプライアンス補正のいずれかを使用することが要求されています。ASTM D790では、クロスヘッド変位のみで、弾性係数を計算することができます。
  • 望ましい試験片のサイズは異なり、試験速度は試験片の厚みに依存するため、試験速度は規格によって異なる場合があります。ISO 178の試験片の好ましい厚みは4 mmで、ASTM D790の試験片の好ましい厚みは3.2 mmです。
  • ASTM D790では試験速度は1つだけですが、ISO 178では弾性係数を測定した後に、2つ目の(より速い)試験速度を使用できます。

試験片

ISO 178の試験片は、ISO 2818に準拠してシートから機械加工されるか、ISO 293/295またはISO 294-1/10724-1にそれぞれ準拠して圧縮または射出成形によって作成されます。望ましい試験片の寸法は、次のように規定されます。

  • 長さ:80 mm (± 2)
  • 幅:10 mm (± 0.2)
  • 厚さ:4 mm (± 0.2)

望ましい寸法が達成できない場合、ISO 178は試験片の厚みに応じた代替幅を提供しています。材料が異方性である場合は、両方の方向を試験します。

手順

ISO178の試験は、荷重容量要求が比較的低いため、通常、卓上型モデル万能材料試験機に対して実施されます。試験機は、規格で規定されている許容誤差内で、1~500 mm/分の間で一定の試験速度を維持できなければなりません。インストロンの3400シリーズおよび6800シリーズ試験機は、すべてのモデルで必要な速度精度要求を満たしています。荷重測定装置(ロードセル)は、報告すべき荷重の範囲においてISO 7500-1のクラス1を満たしている必要があります。試験室が適切な荷重容量と検証範囲を持つロードセルを選択できるように、最小および最大試験荷重を確実に把握することが重要です。

ISO 178に準じた試験の設定

ISO 178に準じた試験の設定

1. Instron 6800

2. Bluehill Universalダッシュボード(2490-696)

3. 2580シリーズロードセル

4. 3点曲げ治具(2810-400)

5. たわみ計プランジャー(2810-403)

 

伸び計

 

ひずみ測定

1. AVE2非接触式伸び計

2. AUTOX750自動伸び計

3. 2630シリーズのクリップ式伸び計

 

ISO 178では、求める結果とそれに伴う精度に応じて、さまざまなたわみ測定システムを使用することができます。たわみ測定は、精度の低いものから順に、クロスヘッド変位、コンプライアンス補正を含むクロスヘッド変位、直接ひずみ測定装置の使用が認められています。ISO 178の2010年の更新以前は、たわみ測定精度の誤差は値の1%を超えてはなりませんでした。しかし、2010年の更新以降、オペレーターはISO 9513に基づくクラス1のたわみ計を使用するか、結果から装置のコンプライアンスを除去できるソフトウェアを使用しなければならなくなりました。

試験室で要求されるたわみ精度がどのようなものであっても、インストロンはそれに応えることができるソリューションを提供します。Bluehill® Universalソフトウェアを搭載した3400シリーズおよび6800シリーズの試験フレームはすべて、コンプライアンス補正の有無にかかわらずクロスヘッドからのたわみを測定することが可能です。インストロンは、ひずみを直接測定するためのさまざまなソリューションも提供しています。一般的なソリューションとしては、プランジャー(たわみ計)にクリップ式伸び計を取り付けたものがあります。最も高性能で高試験処理能力のソリューションには、AutoX750高性能ビデオ伸び計(AVE2)があります。

システムのロードセルと同様に、たわみ測定装置も、報告された結果の動作範囲で検証する必要があります。特に曲げ弾性係数は、きわめて小さなたわみ(0.1 mm 未満)で計算されます。試験の最小変位と最大変位を特定しておくと、検証者に適切に指示することができるようになります。

ISO 178伸び計

治具

ISO 178の試験には、3点曲げ治具が必要です。この治具は、移動クロスヘッドに取り付けられた上部のローディングアンビルと、2つの調整可能なアンビルを持つ、下部の固定された支持ビームで構成されています。インストロンの2810-400曲げ治具は、治具の要件に完全に適合しており、厚さ3.0 mmまでの試験片を試験するための半径2.0 mmのアンビル、または厚い試験片用の半径5.0 mmのアンビルに合わせて使用することができます。支持スパンの要件は、試験片の厚さの比率に基づいており、試験する材料の剛性によって変化します。調整可能なアンビルは、オペレーターが支持スパンの距離を設定することができ、アンビルの正確な位置決めを可能にするために、支持ビームに目盛りの付いた長さ単位を採用しています。また、ひずみ測定装置を使用する際に、たわみ計の中心合わせを容易にすることができます。試験片のアライメントは結果に大きなばらつきをもたらす可能性があるため、各試験において試験片のアライメントが一定であるよう適切な注意を払う必要があります。インストロンの曲げ治具には、試験片の幅に合わせて調節可能なアライメントアームも付属しています。

2810-400
5 kNモデル | 2810-400

試験片の測定

ISO 178では、ISO 16012に準拠して、試験片の長さの中央で幅と厚さを測定することが求められています。少なくとも3回測定し、その平均値を幅と厚みの両方について記録します。インストロンのBluehill Universalの自動試験片測定装置(ASMD)機能により、オペレーターは最大2つのマイクロメーターや測定装置をコンピューターに接続し、測定値の平均値を直接ソフトウェアに入力することができます。これにより、オペレーターの入力ミスが減り、効率性が向上します。

試験メソッド

3点曲げ治具のスパン(下部アンビル間の距離)は、試験片の厚さの関数として構成されます。低温や高温など、試験の環境条件は試験材料に依存するため、試験室とそのお客様との間で合意しておく必要があります。ISO 291に、この情報がない場合のガイダンスが記載されています。インストロンは、温度環境下の試験に対応するため、完全一体型の恒温槽を提供しています。

ISO 178では、クロスヘッド速度の設定方法として、A法とB法が規定されています。A法は試験全体を通して1つの速度を使用するのに対し、B法は初期の弾性係数領域では1つの速度を使用し、残りの試験では2つ目の、より速い速度を使用します。使用した一定クロスヘッド速度は、指定されたひずみ速度を推定するために使われます。予荷重の後、試験片は破断または5%の曲げひずみのどちらかが発生するまでたわみます。荷重とたわみのデータは、十分なデータ取得速度で、試験中を通して記録されます。

試験を設定する際には、正確で一貫したひずみ測定を行うために、十分な予荷重をかけることを強く推奨します。試験を開始する前に試験片に加える力の大きさは、計算の再現性に直接影響します。

ISO 178に準じた試験の設定

ISO 178に準じた試験の設定

1. Instron 3400

2. Bluehill Universalダッシュボード(2490-696)

3. 2530シリーズロードセル

4. 3点曲げ治具(2810-400)

5. たわみ計プランジャー(2810-403)

 

結果

以下は、ISO 178で報告可能な計算と結果の一覧です。

  • 曲げ応力 – 荷重、スパン、試験片幅、試験片厚さの関数。これは、単位面積あたりの力である引張応力や圧縮応力とは異なります。
  • 曲げひずみ – たわみ、スパン、試験片の厚さの関数。これは、元のゲージ長に対するゲージ長の変化である、引張や圧縮のひずみとは異なります。
  • 曲げ弾性係数 – 曲げ応力と曲げひずみの関数で、0.05%から0.25%曲げひずみの間。コード係数は、曲げ応力に対する曲げひずみ曲線上のポイントに当てはめることができます。
  • 曲げ強さ – 曲げ試験で得られる最大曲げ応力。
  • 破断時曲げ応力 – 試験片が破断するときの曲げ応力。材料によっては、降伏点の手前で破断するものもあります。その場合、曲げ強さは破断時の曲げ応力に等しくなります。
  • 5%曲げひずみ時の曲げ応力 – 5%曲げひずみ以内で試験片が破断しない試験における、試験終了時の曲げ応力。

試験処理能力

試験処理能力の向上を必要とする試験室では、システム設定に変更を加えることができます。自動試験片測定装置と試験片アライメント装置は、試験オペレーターの手動入力の量を減らすことで、試験効率を向上させることができます。インストロンのAT3AT6など、試験片の測定、試験片の装填、試験、取り出しが組み込まれた完全自動化試験システムもご利用いただけます。これらのシステムは、オペレーターによる介入なく何時間にもわたって動作できます。さらに、人為的エラーによるばらつきも抑えます。

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