COVID-19により、私たちに強いられた「新しい生活様式」に世界中が適応している中ですが、試験室においても企業は従業員を守るために工夫をし解決策を探さなければなりません。多くの場合、新しい健康選別プロトコルの実施、社会的距離をしっかりとる、清掃手順の改善などの作業場の再編成を実施されているかと思います。

このページでは、社会的距離を改善し、共有スペースが抱えるリスクを軽減するための、試験施設の最適化に役立つさまざまな材料試験技術について説明します。

ハンズフリーグリップ操作

グリップは、万能材料試験機上の最も人の接触の多い部分です。手動式グリップは、多くの試験室で見られる最も一般的なグリップ方法ですが、試験片を挿入してから取り外すたびに手で締め付けたり緩めたりする必要があるため、感染の可能性として考えられる部分でもあります。10kNまでの試験容量の場合、インストロンの2712シリーズ空気圧式グリップは、最小限の手の使用でグリップを開閉できるフットスイッチを装備できるため、より安全な代替手段となります。

3400および6800 シリーズの場合、フットスイッチ付きのスマートクローズエアキットオプションがあり、新品および既設のすべてのシステムに取り付けることができます。33005900、および5500シリーズの場合、自動空気圧式コントロールキットオプションがあり、2つのペダル式フットスイッチが付属しています。


手動式グリップ VSハンズフリーグリップ

手動式くさび型グリップ
 
機械式くさび型グリップのような手動式グリップの締め付け機構は、フェースの開閉時に頻繁に接触する必要があります。
 
空気圧式サイドアクショングリップのフットスイッチ操作
 
空気圧式グリップのフットスイッチ操作により、手でグリップに触れる必要がなく、足を使いグリップを開閉できます。
 


空気圧式グリップのフットスイッチ操作により、手でグリップに触れる必要がなく、足を使いグリップを開閉できます。Bluehill® Universalソフトウエアでグリップ圧を事前に定義しておくことが可能です。グリップ圧は試験メソッドと共に保存されるため、試験メソッドを変更する場合にさまざまな材料または試験片に合わせてレギュレーターを手動で調整する必要がなくなります。

グリップ圧の設定(Bluehill Universal)


オペレーターダッシュボード VS 従来のPC

万能材料試験機のそのほかの接触頻度の高い部分は、コンピュータです。最新のインストロン試験システムならびに、レトロフィットされた旧式の製造終了をしたシステムは、Bluehill Universalソフトウエアとタッチ操作のオペレーターダッシュボードを装備することができます。

タッチ操作が可能な装置はこのコロナ過において避けるべきと捉えてしまうかもしれませんが、従来のマウスやキーボードを清掃する場合と比較すると、使用の都度タッチスクリーンを消毒するほうがかなり楽であることが想像できるかと思います。さらに、インストロンのオペレーターダッシュボードは、ラテックスやニトリル手袋に対応した静電容量式タッチスクリーンを使用しているため、必要に応じて手袋を装着し試験作業のすべてを行うことができます。

試験空間をコンパクトにするダッシュボードとシングルコラム卓上モデル

インストロンのオペレーターダッシュボードのもう1つの重要なポイントは試験室における社会的距離を改善する能力です。オペレーターダッシュボードは、PCタワー、モニター、マウス、およびキーボードが不要になるので、従来のPCセットアップよりも卓上空間を広く使うことができます。PC一体型(AiO)オペレーターダッシュボードは、T-slotマウントブラケットを使用して試験機に直接マウントします。これにより、ダッシュボードの高さと角度をオペレーターに適するように調整できます。ダッシュボードを試験機に取り付けると、シングルコラム試験機に取り付けた時の卓上空間を平均で55%、デュアルコラム卓上モデルの場合、最大31%、床置きモデルで最大16%節約できます。この構成だと、オペレーター同士が距離を取ることができ安全な環境を用意することができます。

Bluehill Universalオペレーターダッシュボードの省スペース


自動試験片寸法測定装置

マイクロメータやノギスなどの装置を共有すると、試験室内の重大な感染経路となる可能性があります。この解決策の1つとして、インストロンの装置ごとに専用の自動試験片寸法測定装置ステーションを設置することが挙げられます。オペレーターが手ではなくフットタップを使ってすべての試験片寸法測定装置から直接ソフトウエアに入力できるようにするフットスイッチを備えたASMDを組み合わせるとなお良いでしょう。この動画ではBluehill Universalでの作業をご覧いただけます。

自動試験片寸法測定装置


オプション装置

Torsion Add-On 3.0や自動XYステージのように、機器への追加オプション装置は、システムの試験機能の拡張と能率の向上という2つ役割を担います。システムの試験機能を拡張することで、ほとんどの場合、機器を1か所に集約し、設置場所を縮小することができます。これにより、空間を確保することができ、社会的な距離を保つことが可能になります。


ねじり付加機能

Torsion Add-On3.0は、5900シリーズまたは6800シリーズ卓上モデル(デュアルコラムまたはシングルコラム)のオプションとして追加し、同時または独立して軸方向およびねじり方向の試験が行えるアクセサリーです。1台の試験機で軸方向およびねじり試験が行えるので、特定の製品の実使用下でのアプリケーションをより良くシミュレートでき、別のシステムで試験を行う必要がないため余分な手順を排除でき効率的です。

通常、これらの試験を別々のシステムで行う場合は、標準の引張試験機とねじり試験機が必要です。仮にこれらを1.8mの社会的距離を取って配置すると、2.9mm程度の卓上空間を消費する可能性があります。

Torsion Add-On3.0 試験スペースの節約

これに対し、6800 シリーズデュアルコラム卓上モデルにTorsion Add-On3.0を搭載することで、卓上空間を約60㎝(528%減)にし空間の節約になります。


自動XYステージ

自動XYステージは、5900シリーズおよび6800 シリーズ卓上モデル(デュアルコラムまたはシングルコラム)に追加できるもう1つの追加アクセサリーで、1台のシステム上の機能性を向上し卓上空間を節約することができます。この追加機能は、複数個所の圧縮、曲げ、および引張試験を必要とする試験の自動化、または複数回繰り返し試験を行う個所のある部品にご使用いただけます。1名のオペレーターで複数の自動化システムを同時に取り扱えるため、試験処理能力を維持するためのオペレーター数を削減することができます。

2台の試験システムに自動XYステージを搭載することで、3台の標準タイプの試験システムに匹敵する試験処理能力を生み出します。この場合も、3台の標準タイプのシングルコラム試験機を1.8mの社会的距離を取って配置すると、5m程度の卓上空間を占めることになります。

シングルコラム試験機とXYステージ

これに対して、自動XYステージを搭載したシングルコラムシステム2台を、1.8m間隔で配置した場合、卓上空間は約2.7mしか使用しません。これによって、スペースの45%削減だけでなく、オペレーター数を減らすことができる利点があります。

自動システム

試験工程の多くのステップは、現在、何らかの形態のロボットまたは非ロボット自動化システムによって行うことができます。工程の自動化が進むほど、オペレーターによる工程が少なくなるため、試験室内での感染の危険性が低減されます。

AT6 6軸自動試験システム

試験工程における以下のすべてのステップは、ロボットによって実行可能です:

  • バーコードによるデータ入力
  • 試験片寸法測定
  • ビデオ伸び計のドットマーキング
  • 試験片取付・取り外し
  • グリップ操作
  • 伸び計操作
  • データベース/LIMSへのデータ出力

自動システムは、幅広い機能で構成されており、すべてを一緒に採用する必要がありません。試験室によっては、オペレーターで行う試験をメインにし、これらのステップのいくつかを自動化する場合、あるいは、ほとんどすべてを自動化するケースもあります。

自動化の割合が大きいほど、オペレーターが実際に試験システムの周辺にいる必要性は少なくなります。例えば、インストロンのAT6 自動試験機は、オペレーターが新しい試験片を試験片ラックに補充しセットするのみで済み、システムが試験工程の残りを処理します。このような流れで試験ができるので、オペレーターは試験室を離れて、より付加価値の高いタスクに集中したり、在宅勤務をすることも可能になります。